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(2) 学ぶべき生命の機能
鞭毛モーターの駆動機構に関しては種々の議論があり、これまでに多数の機構が提唱されている(Schuster,1994)。何れにしても、水素イオンがバクテリアの外から鞭毛モーターのモットコンプレックスを通してバクテリア内に入り込む際、そのプロトンの通過が回転運動に変換されると思われる。以下にこれまでに提唱されているさまざまな駆動機構の一例を示す。
図4−17に示すように、鞭毛モーターの主要部は外側のSリング分子と内側のMリング分子で構成されており、鞭毛の先端のロッドはMリングに固定されている。この二つのリング間でそれを構成するタンパク質がリングの中心から外方向へ並ぶ角度が異なっている。また、これらのタンパク質はプロトンが流入するとイオン結合するため、菌体外から流入してきたプロトンは上下二つのリング上のタンパク質と結合するときに、これらのタンパク質を引き寄せモーターの回転力を生じるものと考えられている。しかし、最近これとは異なったモデルも提出されており、具体的機構についてはこれからの研究を待たねばならない。
また、各分子の熱運動ゆらぎ=kBTに対して、プロトンのポテンシャルエネルギーは200meV=8XKBT程度であり、鞭毛モーターが入力、出力として扱う自由エネルギーはkBTと大差ない。分子マシンとしての鞭毛モーターはシグナルと大差のないノイズの中で駆動していることは注目に値する。
このようにして得られた鞭毛モーターの回転トルクは10-18Nm程度であり、溶液中を自由に泳いでいる菌の場合、1分間に最高15000回転程度まで回転することが名古屋大学の寶谷教授らにより報告されている。

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図4−17 サルモネラ鞭毛モーターの回転機構の一つの仮想図(那野,1994)

 

 

 

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